SIerの年収が上がらないのは、あなたのせいじゃない|現役SIerが内側から見た「上がらない構造」と3つの出口
昇給、数千円だった。
1年真面目に働いて、評価も悪くなかったはずなのに、明細を見て「このペースだと30歳でいくらだ?」と電卓を叩いて、静かに暗くなる。この記事を開いたあなたは、たぶんその計算をしたことがある人だと思う。
先に自己紹介しておく。俺は現役のSIer社員で、未経験からこの業界に転職して入った側の人間だ。だからこそ言えることがある。SIerの年収が上がらないのは、あなたのスキル不足のせいじゃない。構造の仕様だ。外から入った自分には、この業界の給与の仕組みが、最初ずっと「異物」として見えていた。
この記事は転職エージェントが書く「SIer年収論」じゃない。だから「だから転職しましょう」で終わらせない。上がらない構造を内側から解体して、そのうえで転職以外も含めた現実的な選択肢を、フラットに並べる。
まずデータで見る。SIerの年収は「低い」んじゃなく「若いうちは上がらない設計」
感情論の前に、まず公開されている数字で現実を確認する。ここを押さえないと、「自分だけが異常なのか」がわからないままになる。
平均は低くない。でも20代が苦しいのには理由がある
各種の公開調査を見ると、SIerの平均年収はおおむね461〜465万円あたり。これだけ見ると「そんなに低くないじゃないか」と思うかもしれない。でも、20代に絞ると平均は375〜380万円ほどに下がる。平均が低いのではなく、若いうちは平均に届かない設計になっているのだ。あなたが今「低い」と感じているのは、感覚として正しい。
年功カーブの正体
公開データの年齢別カーブを追うと、30代で約518万、そのまま年次を重ねて50代では745万前後まで上がっていく。つまりSIerの給与は「年数をかければ上がる」年功型のテーブルに乗っている。
これを裏返すと、こういうことになる。若手がどれだけ頑張っても、その頑張りが今すぐ給与に反映される設計になっていない。上がるのは「あなたが優秀になったから」ではなく「年次が上がったから」。ここが、真面目な若手ほど報われないと感じる構造的な原因だ。
同じ「SIer」でも、年収は倍以上違う
もう一つ大事な現実がある。同じSIerという括りの中に、平均1,000万円を超えるプライム大手(NRIのような元請け企業)と、400万円台の会社が同居している。つまり「SIerの年収」という一つの数字で語ること自体に無理があって、実際は「どこに居るか」で年収がほぼ決まる。この「どこに居るか」の正体が、次に話す構造だ。
データが示すのは3つ。「平均は低くないが20代は届かない設計」「頑張りより年次で上がる年功カーブ」「同じSIerでも居場所で倍以上違う」。あなたの年収が低いのは、能力ではなく、この設計と居場所の問題である可能性が高い。
なぜ上がらないのか。内側から見えた3つの構造
ここからが本題だ。なぜ「居場所」でここまで差がつくのか。SIerという業界の給与を決めている3つの構造を、内側から見えるかたちで解体する。断っておくと、これは特定の会社の話ではなく、業界一般の構造の話だ。
構造①:多重下請けと商流
SIerの仕事の多くは、顧客から元請け(プライム)へ、元請けから二次請け、三次請けへと流れていく多重下請けの構造になっている。あなたの労働に対して顧客が払っているお金は、この商流を経るごとに少しずつ削られていく。
つまり、同じ働きをしていても、自分がこの商流のどの位置にいるかで、手元に来る前に引かれる量が変わる。これは個人の頑張りではまず動かせない。あなたの給与の上限が、実は入社した時点の「居場所」でかなり決まっている、という残酷な話だ。
構造②:人月ビジネス
SIerの売上の基本は「人数 × 時間(人月)」で計算される。あなたのスキルが上がっても、契約上の単価テーブルが変わらなければ、生み出す売上は変わらない。そして売上が変わらなければ、給与も上がりにくい。
「もっとできるようになれば評価される」と信じて技術を磨いても、人月というモノサシの上では、その成長が数字に化けにくい。スキルの向上と給与の向上が、構造的に切り離されている。ここが多くのエンジニアがモヤモヤする核心だと思う。
構造③:年功の評価制度
そして評価制度。査定で多少の差はついても、その差が反映されるのは年数千円のレンジ、というのはよくある話だ。制度そのものが「若手に大きく還元しない」前提で組まれていることが多い。頑張ってA評価を取っても、テーブルの外には出られない。

この構造、中にずっといると「そういうものだ」と思わされてくる。俺も気づけば慣れかけていた。でも、未経験から外の世界を経てこの業界に入った自分には、この3つはずっと「なんでこうなってるんだ?」という違和感として残っていた。慣れる前に、一度立ち止まって構造を見てほしい。
じゃあ、あなたの場合は「いくら安い」のか
ここまで構造の話をしてきたけど、構造論だけでは「で、自分の場合はどうなの?」がわからない。それが競合の記事の限界でもある。データと構造は見せてくれるが、あなた個人の数字は教えてくれない。
自分の市場レンジと、今の年収を比べてみる
そこで、スキル・経験年数・今いる商流の位置から、あなたの市場レンジのおおよそを出して、現在の年収と比べられる診断を作った。「構造のせいで、自分は市場よりいくら安く働いている可能性があるのか」を、その場で確かめられる。
登録不要、30秒、このブログ内で完結して、入力内容がどこかに保存されることもない。営業の電話がかかってくるようなものでもない。→ エンジニア年収ギャップ診断で自分の位置を確かめる
ここで一度、自分の現在地を数字で確かめてから、続きの「じゃあどうするか」を読んでほしい。現在地がわからないまま出口の話をしても、判断のしようがないからだ。
出口は3つある。転職だけが答えじゃない
現在地が見えたら、次は動き方だ。エージェントの記事はここで必ず「転職」に着地するけど、俺は利害関係がないので、正直に3つ並べる。どれが正解かは、あなたの現在地と価値観による。
出口①:社内で上げる
上流工程やPM・PLへ進んで、社内で評価を上げていく道。これは有効だが、時間軸を正直に言うと数年単位の話になる。そして、前述の年功テーブル自体が変わるわけではないので、上がり方には天井がある。
それでも社内が合うのは、今の会社の技術や人が好きで、腰を据えて上流の経験を積みたい人。資格を取るのもこの文脈なら意味がある。資格手当自体は数千円でも、上流に行くための土台や、後の市場価値にはつながるからだ。焦って動くより、まず社内で経験を固めた方がいい人も確実にいる。
出口②:転職で上げる
年収を決め直す最も直接的な方法は転職だ。さっきの商流の話を思い出してほしい。給与の上限が居場所で決まるなら、居場所を変えるのが一番効く。ただし正直に言うと、転職で上がるのは「市場価値がある人」だけだ。だからこそ、闇雲に動く前に、さっきの診断で自分の市場レンジを確かめる順番が大事になる。
実際の市場価値を「提示額」という形で知りたいなら、年収提示型のスカウトサービスが分かりやすい。TechGO(テックゴー)
のような年収を提示してくれるスカウト型なら、今の自分にいくらの値がつくのかが具体的な数字で見える。複数のサービスをじっくり比較したい人はこの比較記事も参考にしてほしい。
ただし一つ、誠実に線を引いておく。実務経験が1年未満の人は、焦って転職に動かない方がいいことが多い。市場価値はある程度の経験があってこそ値がつく。まずは今の場所で経験を積むことが、結果的に一番の年収アップにつながる時期もある。診断の結果が思ったより低くても、経験年数が浅いなら、それは今は当然のことだと受け止めていい。
出口③:副業で収入の柱を足す
そして、転職エージェントの記事には絶対に書かれない第3の道がある。副業だ。会社の給与テーブルの中で上を目指すのではなく、テーブルの外に、自分の収入の柱をもう一本作るという発想。給与が構造で決まっているなら、その構造の外に出口を作ればいい。
正直に言っておくと、俺自身の副業収益はまだ累計500円で、これで食えるなんて口が裂けても言えない。でも、AIで仕組み化して、会社の評価制度に一切依存しない収入の芽を育てている、という手応えはある。テーブルに依存しない柱を持っているだけで、「この会社で上がらないと詰む」という追い詰められ方から少し自由になれる。具体的なやり方はAI副業の自動化術に、自分に何が向いているかは副業タイプ診断にまとめてある。
3つは、どれか1つを選ぶものじゃない
大事なのは、この3つが排他的じゃないということ。診断で現在地を確かめて、市場価値が高いなら転職を検討し、今は動かないと決めたなら社内で経験を積みつつ副業で柱を足す。「社内 + 副業」の組み合わせが、多くの人にとって一番現実的な解になることも多い。二択で悩むより、組み合わせで考えた方が、選択肢はずっと広い。
まとめ:構造は変えられないが、立つ場所は選べる
SIerの年収が上がらないのは、あなたの能力が足りないからじゃない。商流・人月・年功評価という構造の仕様だ。まず、自分を責めるのをやめていい。ここが出発点になる。
構造そのものは、個人の力では変えられない。でも、「構造の中のどこに立つか(社内・転職)」と「構造の外に何を持つか(副業)」は、自分で選べる。この2つは、今日から準備できることだ。
俺もまだ途中で、副業は累計500円、偉そうなことは言えない。でも、構造を知って、現在地を数字で把握して、選べる側に立つ準備をすることは、誰でも今日からできる。まずはエンジニア年収ギャップ診断で、自分が今いくら安いのかを確かめるところから始めてみてほしい。現在地がわかれば、次の一歩は驚くほど選びやすくなる。
